第1回: コミュニティアートとは?~人々を結びつける新しい創造の形~

「アート」という言葉を聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?美術館で見る名画、劇場での演劇、あるいは音楽の演奏会かもしれません。しかし、「コミュニティアート」という概念は、これらのイメージとは少し異なります。それは、個人の表現や鑑賞を超えた、人々を結びつけるためのアートなのです。

今回は、コミュニティアートがどのようにして人々を結びつけ、癒しや創造性を生み出すのか、その魅力についてご紹介します。


目次

コミュニティアートの定義

コミュニティアートは、その名の通り、コミュニティ(共同体)とアート(芸術)を組み合わせたものです。具体的には、グループ全体でアートを制作しながら、一体感や共通の目的を持つ体験を通じて、メンバー間のつながりを深めるプロセスを指します。

Paolo J. Knill氏によれば、コミュニティアートは「コミュニティの免疫力を高め、対立や困難に直面したときに早期に対応できる力を育む手段」として機能します。これは単なるアート活動ではなく、コミュニティ全体の「健康」を促進するものとして注目されています。

コミュニティアートの目的

コミュニティアートは以下のような目的で活用されることが多いです。

  1. 一体感の構築: アート制作を通じて、メンバーが互いに協力し合い、共通の体験を共有します。
  2. ストレスの軽減: 日常の仕事や生活のストレスから解放され、自由な表現を楽しむことができます。
  3. 新たな視点の発見: アートという「代替の世界体験」を通じて、日常では得られない気づきやアイデアを得ることができます。

例えば、ある大学の部門では、新しいリーダーシップ体制への移行をめぐる対立がありました。この状況を打破するために、コミュニティアートが導入されました。参加者は即興ダンスや音楽を通じて、互いの関係性を再構築し、リーダーシップに対する合意を得ることができました。

アートがもたらす「代替の世界体験」

コミュニティアートは、日常生活とは異なる「代替の世界体験」を提供します。これは、アートの枠組みの中で、予測できない出来事や偶然の発見を楽しむプロセスです。参加者は、これまでにない形で他者とコミュニケーションを取り、新しい関係を築くことができます。

Knill氏が述べるように、コミュニティアートは、**「遊びの幅を広げる」**活動です。これは単なる遊びではなく、創造性を活性化し、意外性の中で新たな道を切り開く体験を指します。この「遊びの幅」が、人々の間に新しいつながりを生み出し、日常生活のストレスを解消する手助けとなるのです。

次回予告

次回は、実際に行われたコミュニティアートの実例を深掘りし、そのプロセスや効果について詳しくお話しします。「アートなんて自分には無理」と思っている方にも、意外と簡単に始められる方法があるかもしれません。お楽しみに!

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この記事を書いた人

飛南 吏玲(森すみれ)
(表現セラピスト/VoxMundiSchool認定ヨガ・オブ・ボイスティーチャー)
阪神淡路大震災後のボランティアをきっかけにアートセラピーに取り組み、1997年より子どもや大人の自由創作スペース「ミューズハウス」をスタート。2006年にアーツ・コミュニケーション・ラボを設立。心理学、アーツセラピーに関する研究を続けながら、講座を展開して、アーツセラピーの普及にも力を注ぐ。また、2015年、声を自由にし、声を通して自分の本質へと導くヨガ・オブ・ボイス(アメリカVox Mudi School)の日本人ではじめてティーチャーのサーティフィケートを取得。
現在は、神戸を拠点に講座やワークショップ、オンラインクラスのほか、宿泊型の自然のと触れ合うアートリトリートを開催。シャーマニックな場、要素を大切にして、アーツセラピー 、ヨガ・オブ・ボイスを提供している。
薬剤師としての経歴もあり「Art as Medicine」薬の代替としてのアートこそ、これからの時代は必要だと考えている。
その他、2012年からは毎年、Touch Artsプロジェクトの代表として、ボランティアベースで、「大人も子どもも自由にアートで表現できる場」としてのイベントを開催し続けている。

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