自己紹介インタビュー

「絵が苦手でも大丈夫」—自由に心を解き放つアートセラピー

「最近、なんとなく疲れている」「モヤモヤが続いている」「ストレスはあるけど原因がわからない」

そんな気持ちを抱えたまま、毎日を過ごしていませんか?

仕事や人間関係、将来への不安…。私たちは常に何かを抱えていても、「病気ではないから大丈夫」と思い込みがちです。でも、心の疲れは見えないだけで、確実に私たちの中に溜まっていくもの。そのままにしておくと、いつか体や心の不調として表面化することもあります。

そんな現代に、薬に頼らず、自分の力で心をケアする方法があります。それが「メディスンアーツ」です。
薬剤師の経験を持ちながら、アート本来の力に魅せられた「ミューズハウス」代表の森すみれさんにお話を伺いました。


目次

小さなできごとが心を縛ることもある

——すみれさんが今の活動を始めたきっかけは?

すみれさん:中学のとき、英語の授業で先生の質問に答えたら、クラスのみんなに笑われたのです。たった一度のことなのに、それがすごく恥ずかしくて……。

それ以来英語の授業がある日は、朝起きるとお腹が痛くなって学校を休みがちに。次第に英語を聞くだけで動悸がしてくるようになってしまいました。

——そんなに大きな影響があったのですか?

すみれさん:事件や事故などの大きなトラウマでなくても、心の奥に残った傷が、その後の人生に影響を与えることがあります。心理学を学ぶことで、実は深く傷ついていた自分に気づくことができました。この経験が、今の活動の大きな原点となっています。

その後、薬剤師になり医療の現場で働きました。そこで感じたのは、薬は症状を抑えることはできるけれど、根本的な解決にはならないことも多いということ。

「薬に頼るだけでなく、自分の力で心や体の状態に気づき、病気になる前にケアできる方法があるのではないか」という問いが、今のメディスンアーツにつながっています。


アートとの出会い、そして気づき

——「アート」に出会ったきっかけは?

すみれさん:最初は、カラーコーディネートや色彩心理を学び始めたことです。その頃、阪神・淡路大震災の被災地で、子どもたちの造形活動を手伝うボランティアに参加しました。絵を描くうちに、子どもたちの表情がどんどん明るくなっていくのを見て、「表現することには力がある」と実感したのです。

——そこから大人にも広げたのですか?

すみれさん:はい。子どものクラスを定期的にスタートしたとき、むしろお母さんたちのサポートをすることの方が、子どもたちにとって良い環境が作れることに気づきました。そこから、大人向けのやり方を探っていきました。

そのとき初めて、「海外にはアートセラピーというものがある」と知りました。「私がやっていることは、まさにこれだ」と気づいた瞬間でした。


「メディスンアーツ」という名前に込めた想い

——アートセラピーではなく、「メディスンアーツ」と名付けた理由は?

すみれさん:日本では「アートセラピー」という言葉の定義があいまいで、「絵を描いて癒される」派「作品を分析する」派など、それぞれの独自のやり方で提供されている状況です。

私が大切にしているのは、ただ、絵を描けばほっこり癒されるということでもなく、分析や評価でももちろんありません。表現すること自体が、その人のもつ自己治癒力、自己調整力を引き出すということなのです。

アート表現自体がお薬の代わりになると考え「メディスンアーツ」と名付けました。


「絵が下手でも大丈夫」その理由

——「絵が苦手」という人も多いと思いますが…。

すみれさん:アートと聞くと、「絵が苦手」と思う人は少なくありません。日本の美術教育では、上手な人が褒められる、評価されるという経験が多いですよね。

そのせいで苦手意識を持ってしまう人が多いのです。でも、アートは自分の中から出てくるものを外に出すためのツールであって、上手い下手は一切関係ないのです。

——実際にはどんなことをするのですか?

すみれさん:最初は画用紙とクレヨンを使い、自由に描きます。テーマを出すこともありますが、「正解」はありません。慣れてきたら、画材も自由に選んでもらいます。

大切なのは描いているときの感覚です。クレヨンなどで力強く塗りたいときもあれば、水彩でシャーッと流すのが心地良いときもあるのです。そうした無意識の動きや感覚と連動して、自分の心の状態を映し出しているのですよね。


描いた後に起こる、不思議な体験

——すみれさんの「メディスンアーツ」の特徴は?

すみれさん:絵を描いた後、その絵から感じた感覚で体を動かしたり、声に出してみたりすることです。絵を描くだけだと、どうしても頭で考えてしまいがち。でも体を動かし声に出すことで、無意識の領域にある感情や気づきが浮かび上がります。

声を出して響かせることで、体と心の奥にあるものが解放される感覚を味わえます。心のままに声を発することで、自分を解放し癒すことができるのです。

——参加者にはどんな変化がみられましたか?

すみれさん:理由はわからないけれど涙が出てきたり、体がぶるっと震えたりすることがあります。これは無意識の領域なんですよね。

印象的だったのは、いつもしかめっ面だった方が、絵をもとにお話を作って演じる際に「意地悪な役」を選んで演じたことです。その瞬間から活き活きとし、顔がパッと明るくなりました。

日常では、なかなか認めることのできない自分の中の感情も、アートだと抵抗なく表現できます。そうやって普段出せない感情を出せると、心のブロックが外れるのです。


なぜ一人よりグループ?“シェア”が生む気づきの化学反応

——一人でやる場合と、グループでやる場合の違いはありますか?

すみれさん:グループでの「シェア」がとても重要です。自分の作品を言葉にすることで気付きが深まり、他の人の視点からの新しい発見があります。「自分の絵にそんな見方があるんだ!」と驚くことも多いですよ。

——悩みがない人でも効果はありますか?

すみれさん:実は「特に悩みはない」と思っている方にこそ参加していただきたいのです。

健康な方でもストレスや将来への不安を抱えながら生活している方がほとんどです。それが病気として現れる前に気づいて対処できれば、人生をより積極的に楽しく生きることができます。


あなたも今日から始められます

——参加してみたい方は、どこから始めればいいでしょうか?

すみれさん:定期的にワークショップを開催しています。まずはそちらにご参加ください。引き続き、ワークを習慣化するために、毎週日曜日の朝7時から30分間、無料で自由にアートを楽しめる時間を設けています。

——継続することの意味は?

すみれさん:一回の体験でも気づきはありますが、継続することで得られる変化はさらに大きいです。せっかく開いた心も、日常に戻るとまた閉じてしまうことがあります。定期的に自分を自由に表現する機会を持つことで、その状態を保ち続けることができるのです。


各地に「安心して自分を解放できる場」を広げたい

——今後の展望を教えてください

すみれさん:アートを通して自分と向き合える場を、各地に作っていきたいと思っています。そのための場を作ってくださる方達の養成にも力を入れており、「入門編」(全4回)で自由な表現を体験していただいた後、「ベーシック編」(1年間)で実際の提供方法まで幅広く学んでいただけるコースを用意しています。

困った時や辛い時に「アートを通して安心して自分を出せる場所、自分の心のうちを話せる場所」が、全国どこにでもあるような状態を作ること。それが私の目標です。

——最後に、迷っている方へ一言お願いします。

すみれさん:「絵が下手だから…」と思う必要はありません。上手い下手は関係ないし、人がどう思うかも関係ないのです。大切なのは「やってみる」ことだけ。安心して自分を出せる場所を用意していますので、まずは気軽に体験してみてください。表現することで、今まで気づかなかった自分に出会うことができますよ。

参加方法

  • 体験ワークショップ(定期開催。詳細は公式サイトをご覧ください)
  • 無料体験(毎週日曜 朝7:00~7:30)
  • ファシリテーター養成コース(入門編 全4回/ベーシック編 1年間)

詳細・申し込み:「ミューズハウス 森すみれ」で検索、またはSNSでの情報をチェックしてください。

インタビュアー

森田 かえ

横浜市を拠点に活動するママライター。メーカーでの事務業務や、化粧品販売員などの接客業を経て、育児と家事を両立しながら取材ライターとして活動中。
営業事務や、接客業で培ったコミュニケーション力を活かし、クライアント様の想いを丁寧に引き出すインタビューを得意とする。休日の楽しみは、ドラマ・映画鑑賞。

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この記事を書いた人

飛南 吏玲(森すみれ)
(表現セラピスト/VoxMundiSchool認定ヨガ・オブ・ボイスティーチャー)
阪神淡路大震災後のボランティアをきっかけにアートセラピーに取り組み、1997年より子どもや大人の自由創作スペース「ミューズハウス」をスタート。2006年にアーツ・コミュニケーション・ラボを設立。心理学、アーツセラピーに関する研究を続けながら、講座を展開して、アーツセラピーの普及にも力を注ぐ。また、2015年、声を自由にし、声を通して自分の本質へと導くヨガ・オブ・ボイス(アメリカVox Mudi School)の日本人ではじめてティーチャーのサーティフィケートを取得。
現在は、神戸を拠点に講座やワークショップ、オンラインクラスのほか、宿泊型の自然のと触れ合うアートリトリートを開催。シャーマニックな場、要素を大切にして、アーツセラピー 、ヨガ・オブ・ボイスを提供している。
薬剤師としての経歴もあり「Art as Medicine」薬の代替としてのアートこそ、これからの時代は必要だと考えている。
その他、2012年からは毎年、Touch Artsプロジェクトの代表として、ボランティアベースで、「大人も子どもも自由にアートで表現できる場」としてのイベントを開催し続けている。

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