物語の力

人を取り巻くストーリー、私たちはストーリーで生きています。ストーリーを持たずして、生きていけません。

暗記力をアップさせるのにも物語を利用するそうですし、最近(でもないか・・・だいぶ前から)マーケティングにまで、ストーリーが取り入れられるようになってきて、私たちは日々、様々なストーリーに翻弄されて日々を送ることになっています。

本当に自分の生きたいストーリーを選んで生きることが難しくなっている気がしています。誰かの語る、これが素晴らしいんだ!こうあるべきなんだ!と言うストーリーを刷り込まれ、それをやっちゃダメだ、それにはこれが必要だ、こんなところを磨かなければならない、これを頑張ればきっと・・・とそんな風に続けていると、ある日
おかしいなぁ・・・、なんでこんなになっちゃったんだろう・・・、ちっとも幸せじゃない、毎日がなんだか虚しい、そんな状態に陥らされてしまっていることに気づきます。

とりわけ子供は、親の選んだストーリーの主人公を、知らず知らずに生きさせられていると言うことが起こっています。
親自身が自分が生ききれなかったストーリーを子供に託している、そんな事はよくある話です。
そして、そのストーリーどおり、素晴らしい人生のシナリオを生きて、表面的にはハッピーエンドで終わりを迎えたとしても、その人自身が生きたかった生き方でなければ、ハッピーエンドにはなりません。

そもそも自分自身の物語をどれだけの人は生きることができているでしょう。
誰かの作った物語に自分を重ね合わせて、その時だけは幸せな気持ちになるという事はよく起こっていることです。
テレビドラマを見ていて、その主人公と自分を重ね合わせ、その主人公を取り巻く様々な状況に一喜一憂し、主人公がハッピーになることで自分自身もハッピーになる、と言う体験をしている状態ではないですか?
そのこと自体は全く悪いことではありません。自分がすぐに手に入れることができない物語を空想の物語として体験していく事は心の成長につながっていく場合もあるので、とても大切な体験です。
小さな子供が、物語の中でヒーローになり、悪ものをやっつけたり、宝物を手に入れたり、お姫様は素敵な王子様にであったり・・・、そういうことを物語を通して体験していくことで、自尊心が育っていくからです。

また一方で、物語は人生の苦難などを伝えてくれます。先住民族たちの物語の中では、それを読みついていくことで生きることの困難さや人は神神生きるべきであると言うことを伝えているものがたくさんあります。そうやって人は自分の力ではどうにも超えることができない恐れ多いものに対しても対応していく力を育んでいっているんだと思います。

また、世界各国にある神話は、大いなる物語です。
人が無意識の中に元型として持っているものを、神の行為を通して知ることができます。様々な存在との関係やあり方やそして普段は表には出していけないと思っている欲求なども、その物語の中で扱われています。様々な神々の物語は、日常の私たちの暮らしの中ではタブーだと思える内容が、当たり前のように展開されているものも多くあります。

また物語には昔話やその地方地方でのお話もあります。民族的な文化的な背景による教えが、その中にちりばめられています。その物語を聞くことで、私たちはこうやって生きるべきなんだということを学び、日々の暮らしを安全に守っていくという役割もあったと思います。しかし現代の私たちの暮らしの中では、もう必要ではない物語も語られています。文化が違えば物語も変わってくるのです。

さて、ここで皆さん自身の物語をもう一度振り返り、物語を再構築するようなワークショップを計画しています。
あなたが今まで自分の中に取り入れてきた物語は、どのようなものがあるでしょうか?
それを一つ一つ読み解いていきましょう。

改めて、あなたの中の物語をも見直して、あなた自身の生きていきたい物語を再構築していきます。
これはリアルな願望のストーリーを書き出すこととは違います。
目標を明確にするとか、ビジョンボードなどを利用して、理想の未来を作成していくこととも全く違います。

あなたが必ず物語の主人公になると言う必要もありません。
ただ、あなたの中に眠っている物語を、表に出して、大切に紡いでいく作業です。
言葉で綴り、色や形、音や動きも加えていくことで、感覚的に物語と遊んでもらいたいと思います。

「遊ぶ」は「play」ですが、劇を「演じる」のも、「演奏する」のも、「play」ですね。

一緒にplayできることを楽しみにしております。

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この記事を書いた人

飛南 吏玲(森すみれ)
(表現セラピスト/VoxMundiSchool認定ヨガ・オブ・ボイスティーチャー)
阪神淡路大震災後のボランティアをきっかけにアートセラピーに取り組み、1997年より子どもや大人の自由創作スペース「ミューズハウス」をスタート。2006年にアーツ・コミュニケーション・ラボを設立。心理学、アーツセラピーに関する研究を続けながら、講座を展開して、アーツセラピーの普及にも力を注ぐ。また、2015年、声を自由にし、声を通して自分の本質へと導くヨガ・オブ・ボイス(アメリカVox Mudi School)の日本人ではじめてティーチャーのサーティフィケートを取得。
現在は、神戸を拠点に講座やワークショップ、オンラインクラスのほか、宿泊型の自然のと触れ合うアートリトリートを開催。シャーマニックな場、要素を大切にして、アーツセラピー 、ヨガ・オブ・ボイスを提供している。
薬剤師としての経歴もあり「Art as Medicine」薬の代替としてのアートこそ、これからの時代は必要だと考えている。
その他、2012年からは毎年、Touch Artsプロジェクトの代表として、ボランティアベースで、「大人も子どもも自由にアートで表現できる場」としてのイベントを開催し続けている。

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